エチュード⑤ 『忘れられし過去』

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  幼シグ「フィー!今日はオレと外に行こう!」 シルフィ「…外?」 幼シグ「花畑になってるシャインスポット見つけたんだ!フィーに花畑を見せてやる!来い!」 シルフィ「シグルド様…でも、イシュタロス様が…」 幼シグ「イースは今日は一日中勉強だ、今度一緒に連れて行こう?それとフィー、オレの事はシグでいいと何度言えばわかる」 シルフィ「……シグ…」 幼シグ「ほら、フィー行くぞ!」 幼シグ「ここだ!どうだ、キレイだろう?」 シルフィ「………お花が…咲いてる…」 幼シグ「フィー、気に入ったか?」 シルフィ「………シグ…君」 幼シグ「何だ?」 シルフィ「………ありがとう…」 幼シグ「…れ、礼にはおよばんっ!」 シルフィ「………お花、綺麗ね…」 幼シグ「そ、そうか?よかったなっ」 シルフィ「………短い命を…懸命に咲かせて…私なんかとは、比べものにならないくらい…綺麗…」 幼シグ「…フィーはニンゲンなんだよな?」 シルフィ「………。」 幼シグ「ニンゲンてのは、アンダーアースの者達より老化が早くて寿命が短いんだって、この間習った」 シルフィ「……そう…」 幼シグ「でもフィーは、15年前初めて合った時と、姿がまったく変わらないな。…なぜだ?」 シルフィ「………。」 幼シグ「ゼノレウス陛下に聞いたら、フィー本人に聞けと言われた」 シルフィ「ゼノス様が…」 幼シグ「…フィー、教えてくれ。成長の遅い純血魔族のオレですら、お前と初めて会ってから15年、ニンゲンでいう5歳分は成長した。なのにどうしてお前は年を取らない?それに兵達は何故時折、戦う術を持たないお前に『鍛錬の相手をしろ』なんて言う?お前も何で怪我をすると分かっていてそれに従う?どうしてお前はいつも………そんなに悲しそうに、すべてを諦めてるんだ」 シルフィ「………。」 幼シグ「…フィー、答えろ」 シルフィ「……私はね。止まってるのよ、シグ君」 幼シグ「何がだ…?」 シルフィ「不老不死なの…この体は」 幼シグ「不老…不死?」 シルフィ「私は一度死んで、生き返らされたの。…その代償に唯一の肉親を失って、死ぬ事が出来ない体になったの…。」 幼シグ「だから…姿が変わらないのか?」 シルフィ「うん…。…こんな事、私は望んでなんていなかったのにね?皆に生きていて欲しかったから、私は…っ!」 幼シグ「フィー…」 シルフィ「なのに…っ生きて欲しかった人は皆死んじゃった…っ!私だけ生きてたって、意味ないの…意味なんか無いのに…ッ!」 幼シグ「………一人で、辛かったな」
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