魔族の王と囚われの姫/番外編ｼﾅﾘｵ

エチュード⑤ 『忘れられし過去』

ｼﾙﾌｨ「…っ…ふ…ぅぅ…っ…シグ、くぅ……っ」
幼ｼｸﾞ「フィー、泣け。お前はオレの世話係だろう？オレのもんなんだから、オレの前では余計な心配しないで泣いていろ」
ｼﾙﾌｨ「っ…ふ、ぁあ、ぅあああああ……ッ」
幼ｼｸﾞ「…これからはずっと、オレがいてやる…」

ｼﾙﾌｨ「…ごめんねシグ君、服…」
幼ｼｸﾞ「別に、気にするな。ところでフィー、時折兵に呼ばれて鍛錬に付き合わされるのは…お前が不死だからか？」
ｼﾙﾌｨ「………うん。実際に、人を斬らないと…本番で役に立たないんだって…兵長さんが……」
幼ｼｸﾞ「ゼノス様は知らなかったみたいだぞ？」
ｼﾙﾌｨ「え…許可は取ってあるって…言われて……」
幼ｼｸﾞ「何番師団だ？」
ｼﾙﾌｨ「あの…シグ君？…何か、笑顔が…怖い、よ…？」
幼ｼｸﾞ「フィー、斬られもて痛くないのか？それとも斬られるのが好きなのか？」
ｼﾙﾌｨ「痛いし嫌だけど………気絶はしても、死ねないから…私なんかで役に立つなら………」
幼ｼｸﾞ「お前はオレのものだろう？許可なく他の奴のために動くな」
ｼﾙﾌｨ「えと…私はイシュタロス様とシグ君のお世話役で…」
幼ｼｸﾞ「オレのものってことだろう」
ｼﾙﾌｨ「………そう…なの…？」
幼ｼｸﾞ「そうなんだっ！」
ｼﾙﾌｨ「………何か、違うような…」
幼ｼｸﾞ「そんなことはどうでもいい。それより、お前はオレの命令以外で自分を傷つけたらダメだからな。元に戻った時、不老不死の時の癖が抜けなかったらどうする」
ｼﾙﾌｨ「…元、……に？」
幼ｼｸﾞ「魔族の寿命は長いんだ。その間にお前の呪いの解き方も判るだろう。その時ヘンな癖なんかついてたせいですぐ死んだら、つまらないだろう」
ｼﾙﾌｨ「シグ君…」
幼ｼｸﾞ「フィー、オレが力をつけたら、お前の呪いを解いて、光の大地に連れて行く。…だから、いなくなるなよな？約束だからなっ！」
ｼﾙﾌｨ「……うん、約束ね」

fin

現在、シルフィールはこれを覚えてますが、シグルドは忘れてます。
シグルドの淡い恋心と独占欲は、いつしか惰性を伴い執着心のみが残り…現在の二人になります。
シルフィールは覚えている分だけ悲しみにくれ、シグルドは忘れている分だけ焦燥感に駆られ、更に悪循環を生んでいるのが今の状況です。