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指でボタンを折り曲げようとした瞬間、喉を潰されるような圧迫感に襲われ、慌ててボタンを投げ出した。
「何なんだこれは!」
じっとりと冷たい汗が吹き出す……今まで霊感も無ければ、そんな存在や超常現象とやらも信じていなかった心に、おぞましい何かがどっと押し寄せてきた。
恐怖を再確認してしまうのは百も承知の上、震える手で先程の手紙を読み返す――
『このボタンを見ず知らずの四人に渡してください』
『自分で持ち続けていると四ヶ月おきに身内が一人ずつ死んでいきます』
自分の身内といえば両親くらい、他に身内と呼べる血筋は残っていない。
こんな物騒な代物を自分で持ち続けているのは馬鹿馬鹿しいし、かといって他人に送りつけるのも不躾が過ぎる。
今日がゴミ出しの日なのを良いことに、手紙もボタンも袋に放り込み、さっさとアパート前のゴミ捨て場に置いた。
――が。ゴミを出して部屋に戻ると、捨てたはずの封筒が、まるで当て付けのように玄関に落ちている。
五回、六回、部屋とゴミ捨て場を往復してみたが、何度やっても同じことの繰り返し……
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