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あの怪しげな封筒は、母が手洗いに行っている隙に通勤鞄に隠した。これは絶対、母の目に届かぬ所にしまわねば……
翌朝。既に起きて台所に立つ母の、食器など洗う音で目が覚めた。
「お、助かるよ母さん。どうせ家に居る間は暇だろ。家事の方は任せるわ。少しは気も紛れるだろうし」
――しかし、自分が落ち着いていられたのは、家を出るまで。職場に向かう途中も、鞄の中が気になって仕方がない。
更に四ヶ月が過ぎたら、今度は母が死ぬのだろうか? それとも?
いや、父の件は偶然だ、偶然だろうと思いたい。たまたま、日にちが重なっただけ――
職場の机の、自身でさえ滅多に開けない引き出しの奥に例の物を押し込んでしまうと、仕事の忙しさからか、その事もどうでもよくなってきた。
そう、今はくだらない都市伝説になど、付き合っている暇はないのだ。
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