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そこは、もう6月だというのに鳥肌が立つほどの異様に冷たい空気が流れていた…
いつもなら様々な人々で賑わっていて騒がしいはずのこの商店街が今は、時が止まったかのような静けさだった…
その中から一人の男の狂気に満ちた叫び声と、それから逃げる人々の悲鳴だけが響いていた…
その男は商店街を悠然と歩いていた…
両手には血のついた包丁が握られていてその背後には数人の人間が血まみれの姿で倒れている…
そして辺りの人間たちは悲鳴を上げながら逃げまとっていた…
男は目の前の建物から一人逃げ遅れて出てきた中年の男性を見つけると、獲物を見つけたかのように走り出し、中年男性の前に立ちはだかった…
そして微かに頬を上げて言った…
「これで、6人目かな?」
そう言うと躊躇なく右手に握られた包丁で中年男性の喉元を切りつけた。
身動きも出来ず、恐怖の表情のまま切り付けられた男性は、真っ赤な血飛沫を上げ成す術なくその場に倒れ込んだ。
さらにまだ息が残っているのを確認した男は、左手に持っていた包丁をその左胸に突き刺した。
そして男はゆっくりと立ち上がり、再び歩き始めた。
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