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「ふぇー…、風呂あっつかったぁ。部屋にクーラーつけといてよかったな!うん」
腰近くまであるウェーブのかかった長い黒髪、太めの眉に大きい瞳。
16歳ほどと思われる少女は、携帯を片手にのっそりと椅子に腰かけパソコンを開いた。
「遅いー…、早くしろー…」
少女の願いとは裏腹にパソコンは時間をかけゆっくりと立ち上がっていく。
パソコンが立ち上がりきると、少女は画面の左側に出てくるログインページにIDとパスワードを手早く入力し、カチカチッという爽快な音を部屋に響かせた。
ディスプレイにはオンラインゲームのスタート画面が映っており、少女がクリックやら入力やらをすると、右上に《ソリチュード》と表示された町のような背景が映った。
その画面の中央には、ONLINE:ひな[神無月]という文字を頭の上に浮かべた、少女とよく似た容姿や服装をしたキャラクターが立っている。
「っと、忘れてた」
そう言うと、慌ててGoogleトップページを開き、何やらお気に入りからもログインをした。イヤホンマイクを装着する。
「もっしもーし」
少女が画面に向かって声をかけると、『よォ』と一言、少女と同い年くらいの青年の声がイヤホンから聴こえた。
同時にONLINE:冬護[如月]を頭上に浮かべた青年のユーザがひなのユーザの横に現れた。
「ばんわ!旦那」
『元気そうで何よりだよ、ひな』
「毎日の楽しみだからねー」
『こんばんはー、ひな居るかい?』
割り込んできたのは、大人びた女性の声。青年と同様に、ONLINE:ハンキル[睦月]というチャイナドレスを着た女性ユーザが現れる。
「ハンキルー!ばんわ!」
『ばんわ』
ふふ、と小さな笑い声がイヤホンに漏れる。
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