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『いやかい?』
しばらく黙り込んだままの私に、隼人先生が不安げに聞いてきた。
私は、慌てて首を横に振ると先生は、嬉しいそうに微笑み私を車イスに座らせる。
『どこに行くの?』
『どこがいい?』
『じゃ水族館』
『わかった』
病院の近くに小さな水族館がある。
イルカやシャチみたいな大きなのはいないけど、私の一番好きな場所。
先生は、ゆっくり車イスを押し始める。
外は、日差しが強くなって夏だなと感じる。
病室では常に温度調節がされていて快適だから季節感がない。
病院の前の並木道を10分程行くと水族館にたどり着く。
2階建ての小さめの建物。
看板もなく見た目で水族館と判断するのは難しい。
私も、春に言われるまで知らなかった。
中に入ると、四方をガラス張りの大きな水槽になっていて、いろいろな魚達が自由に泳いでいた。
照明は、水槽の上だけにありまるで海底にいるような雰囲気だった。
『いいなぁ~あんなに自由に泳げて』
『海に行けば自由に泳げるよ』
『先生・・・』
『人魚姫だろ?』
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