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その夏の雨の日
転校してきた相田くん‥もとい凪
たまたま私が座ってた席が席替えでは人気のたかい窓側後ろ席で、たまたま先生が私の横の机をあてがった‥ただそれだけの話
私は委員長でもなければ、こんな馬鹿で有名な学校の一生徒
いやね、正直さ、思ったの
こんな人に女がいない訳ないって――
「ねぇ、教科書見せてくんない?」
「え?」
「授業はじまったし」
いけね。
私が一人妄想してる間にとっくに授業はじまってた
凪が私の側に寄る
めくられるページ、ふわっと香水の匂いがした
あ~
これって私と一緒のだ…って思った時
「おたく、名前なんだっけ?」
かすれた声がまた素敵で
「倉田です」
「したの名前は?」
「愛です」
「ふ~ん、昼休み校内案内してよ」
「え?あ、うん」
やった。二人きりのチャンス
心の中でガッツポーズした
授業なんて全然きいてなかった
彼の口元とか、本をめくる指先とか、何もかもが綺麗で
それと、私と同じ事を考えている数人の女子よりメールの嵐
『彼女いるかきけ』とか、『どこ住み?』とか。
できればききたいわよ
でもね、さっきから先生がこっち見てるのよ
なんて、メールうってたら凪がくすくす笑った
どうやら、メールが見えたみたいで…
彼はツボにはまってしまったようで細い指先を口元にあてていた
私ってばかなり恥ずかしいやつ
「愛ちゃん。昼休みに案内してくれたら教えてあげるよ」
授業のチャイムと同時に凪がそう云った
昼休み――。
約束どおり彼はいろいろ教えてくれた
本当は高三だという事
いろいろあって転校した事
そして、
彼女はね…
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