第①章

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凪が転校してきてから何日かたって夏休みをむかえた 人の噂話とはとどまる事をしらない 話はどこからくるのかどんどん溢れてくるのに、そんな噂などどこふく風 凪はいつも涼しい顔で外をながめていた 私はといえば彼にお気に入りの席を奪われたものの、初日の日以来なんの会話もなかった 噂――― 本当かな? そうは思うけど確かめる勇気などなく でも気になる存在ではあったわけで そんな中、むかえた夏休み 馬鹿学校でも赤点とらない程度にがんばったテスト 担任にバイト許可をもらった 国の施設の公共宿ってやつ ようは仲居さん 悠が誘ってくれたんだけど、将来、調理関係の仕事をめざしていた悠は調理場 そして あついあつい夏休み 「今日から八月いっぱいアルバイトの倉田さんです。え~もう一人、私の息子がくるのでよろしくお願いします」 主任らしき男性のあいさつ 第一印象は大切。ここぞとばかりのスマイルをふりまいた 「倉田愛です。よろしくお願いします」 朝礼もそこそこ、すぐに先程の主任さんが仕事場の説明にはいった ネームプレートには相田と書いてある。 相田なんてめずらしくない けど、あの日以来話もしなかった凪の顔が思い出された 「で、一通りの流れはいいですか?」 主任さんがやさしくスマイル あれれ? この笑顔って 私自慢じゃないけどいい男は忘れないのに… って思った時――― 「親父、わるい。遅れた」 髪の毛、黒いじゃん? すごく深い漆黒の目の色じゃん? 「お前、隣の席の…」 なんて、偶然 でも、現実はこんなもん 名前さえ覚えられてませんでした 私の夏休みが始まる
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