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「おまえさ……」
陸の声でハッと我に返った。
「どうするんだ?
このまま喧嘩別れみたいになっていいのか?」
「…………」
「余計なことだと思ったけど、彼女に念押ししておいたからな。
俺はこの先も、弟の彼女を恋愛対象として見る気はないって」
「アズ……なんて?」
「あきらめないってさ」
「だろうね」
僕は投げやりに応える。
「おまえは彼女の何に魅かれたんだ?
アイドル並に可愛いところか?
明るい性格か?」
「どこって……あらたまって考えたことないよ。
そりゃすごい可愛いと思ったし、一緒にいたら理屈抜きに楽しかったし、元気もらえたし。
なんでアズがオレの彼女なんだろって不思議に思うこともあったよ」
陸が小さく溜め息をついた。
そして僕の肩に手を置いた。
今度は抵抗しなかった。
「素直で優しいからな、おまえは……。
彼女の好き勝手にさせてたんだろう?
他人に嫌われることを極端に怖がるところがあるからな。
彼女と喧嘩したこともなかった。そうだろ?」
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