空とはつき合えない。

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  (いつから? いったいいつから僕に隠れてメールしたり電話したり、逢ったりしてたんだ!?) だめだ。 パニックだ。 耳から煙が出そうだ。 「帰る!」 僕はたまらず立ち上がった。 屈辱感で頬が燃えるように熱い。 こぶしを飲み込んだように喉が苦しい。 「待てよ」 陸が僕の手をつかんだ。 力まかせに振り切ったら、弾みでテーブルの角に手の甲をしたたか打ちつけた。 「っ──」 (クソっ!! なんなんだよっ!) 僕の中のなにかが、ぶつっと音をたてて切れた。 「いいよ。解ったよ! アズの気持ちが陸にいってるんだから、オレにはどうすることもできないってことだよね! このままふたりがつき合えばいいんだよっ!!」 ふたりを恨みがましい目で睨みつけ、そんなカッコ悪い捨て台詞を吐き出した。 アズを責めることも、陸を問いつめることもできない臆病者。 情けないけど、それが僕──今井空汰(そらた)だ。 顔を伏せ、痺(しび)れる手をぎゅっと握りこんだまま、僕は足早に店から逃げ出した。       ・
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