空とはつき合えない。

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  ━━━━━━━━━━ 両耳を手で強く塞いで、真っ暗な部屋のベッドに突っ伏した。 気づけなかった。 アズの気持ちが離れていたこと。 弟の彼女に告白されたっていう、陸の複雑な状況も。 アズが彼女だっていう夢のような現実に、有頂天になりすぎていたのかな。 ばっさりと『つき合えない』と切り捨てられたショックよりも、ふたりが連絡取り合ったり、ひょっとしたら逢っていたことを気づけなかったショックのほうが大きい。 (あまりにショックがでかいと放心しちゃうんだな……) 初めて知った。 怒りや涙は一瞬で、そのあとは現実逃避するのみだった。 ずっと耳を塞いでいたせいで、頭痛がしてる。 「うぅ」と、うなりながら寝返りを打ったとき、コンとノックの音が響いた。 「空。入るぞ」 声と同時に明かりが点いた。 眩しさに眉をしかめて起き上がると、陸が缶ビールを手にドアに寄りかかっていた。 その口もとには苦笑が浮かんでいる。 僕はくしゃくしゃになった髪を直しながら、ベッドの上にあぐらをかいた。     ・
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