空とはつき合えない。

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  陸は黙って僕の横に座り、プルタブを引いてビールを一口飲んだ。 (ヒトの気も知らないで大人ぶりやがって!) 僕は飲めもしないのに陸から缶を奪い取り、勢いだけでぐいっとあおった。 想像以上の苦味に、ドラマの中の下手くそな演技みたいに、ビールをぐふっと吹き出してしまう。 (苦い! 苦過ぎる!! なんでこんなもの美味そうに飲むんだ!?) 目尻に涙が浮かんでくる。 「おい、大丈夫か?」 陸が背中をさすろうとしたけど、僕は乱暴に身をよじった。 いじらしい抵抗だ。 陸の顔が見られない。 けど、陸は僕の横顔をじっと見ているのが分かる。 陸が座っている側の右半身が妙に熱かった。 陸は僕の手から缶を取りあげて、黒いローテーブルの上に置いた。 「タバコ、いいか?」 ポケットを探って陸が訊く。 「禁煙。 これ以上オレの部屋をヤニ臭くすんな」 吸わせるもんか。 陸がタバコをくわえた姿は、憎らしいほどかっこいい。 今は絶対見たくない。 僕はまだまだ子供だって思い知らされるから。     ・
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