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口のなかが麦臭くて苦い。
唇をぬぐおうとして、小さなゲップが出た。
陸がフンと鼻で笑う。
「んだよっ!」
反射的に振り向くと、思いがけず穏やかで優しい陸の笑顔があった。
そんな顔……。
反則だ。
陸は大人。
そしてメチャクチャかっこいい。
男の僕から見ても。
だからアズが惚れるのも分かる────って、それは違うだろ?
アズの方から告白してきたんだから。
アドレスを交換してすぐにこんなメールが届いた。
[今井くんってすごい可愛いよね。
彼女いる?
フリーならつき合おうよ]
可愛いという形容は正直嬉しくなかった。
だって僕はとりあえず男だから。
確かに小柄で細くて、小学校低学年頃までは女の子に間違われることもよくあった。
声変わりしてもたいして低音にはならなかったし、男のクセに色白で無駄にまつ毛長いって女子に散々嫌味は言われるし。
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