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陸みたいな男に生まれたかった、ってずっと思ってきた。
むちゃくちゃ男前で頭が良く、品行方正。
親の信頼に厚く、常に女子にはモテまくり。
何一つ欠点のない、今井陸朗──。
『リクロウ』。
名前の響きもいい。
陸は大地。男らしさの象徴だ。
僕は『ソラタ』。
空って確かにスケールは大きいけど、なんか僕には大空を漂うタンポポ綿毛のほうが似合ってる気がする。
だいたい。
『空汰』の『た』が余計なんだよ。
なんか間が抜けてる響きなんだ。
『空』でいいじゃん。
好きになった女の子はいた。
でも、一度も告白したことはない。
断られるのが怖いからだ。
そう。
僕は根っからのチキン。
だから、つき合ってって言われたのも、もちろん初めてだっだ。
しかもめちゃめちゃ可愛くて明るくて、クラスの男子の人気を独り占めのアズに告白されたんだ。
(有頂天になった僕を誰が責められる!?)
と、開き直ってもバチは当たるまい。
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