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機械オンチの母が、
自分の誕生日に
デジカメを買ってきた。
「ほらほら、
デジカメ買ったの。」
どうやら
嬉しいらしく、
子供みたいに
はしゃいでいた。
それから2、3日後
困り顔の母がやってきた。
メモリが一杯になって
写せなくなったと言う。
「どうすればいいの?」
ちょうどその時、
いらついていた私は
「忙しいから説明書を読め」
と怒鳴ってしまった。
さらに
「つまらないものばかり
写しているからだ」
とも言った。
そうしたら母は
「ごめんね。」と言った。
それから3年後の誕生日、
母は他界した。
これまでの事が
悔やまれてならなかった。
全てを終えて、
遺品の整理をした。
いろんな品に思い出があり、
なかなかはかどらなかった。
その中に、
あの時のデジカメを見つけた。
メモリは一杯だった。
なんでもかんでも
撮っていて、構図は
滅茶苦茶だったが
その中に
私の寝顔が写っていた。
日付は母の誕生日だった。
涙が止まらなかった。
END
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