8414人が本棚に入れています
本棚に追加
「香奈、指輪、貸して。」
「え…あ、はい。」
私がネックレスから指輪を外して渡すと、斗真は床に片膝をついた。
「ちょ…斗真?」
真剣な顔のまま、私の左手をそっととる。
強い瞳に見上げられ、私の鼓動が高鳴った。
「香奈、俺の弱い所もダメな所も…知ってるのはお前だけで良い。…香奈が一生俺の隣で笑っていてくれれば…俺はお前を世界一幸せにしてやれる自信がある。」
ゆっくりと、斗真の長い指が私の薬指に指輪を通していく。
サイズぴったりなその指輪が…私の背中を押すように光った。
「香奈、愛してる…。俺と結婚してくれ。」
その言葉に胸が詰まる。
無意識に涙がポロポロ零れ声が出なかった。
さっきまでの不安が嘘のように消えていく。
辛かった日々も、泣いた事も。
全てこの日の為だったような気さえした。
「香奈、返事を…」
斗真が立ち上がって私を引き寄せる。
髪にキスを落とし、私の手を包むように握った。
返事なんか…決まってるじゃない。
涙を流しながら、私は満面の笑みを斗真に向けた。
「こちらこそ…よろしくお願いします。」
最初のコメントを投稿しよう!