彼の正体~好きになるんじゃなかった~

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「香奈、指輪、貸して。」 「え…あ、はい。」 私がネックレスから指輪を外して渡すと、斗真は床に片膝をついた。 「ちょ…斗真?」 真剣な顔のまま、私の左手をそっととる。 強い瞳に見上げられ、私の鼓動が高鳴った。 「香奈、俺の弱い所もダメな所も…知ってるのはお前だけで良い。…香奈が一生俺の隣で笑っていてくれれば…俺はお前を世界一幸せにしてやれる自信がある。」 ゆっくりと、斗真の長い指が私の薬指に指輪を通していく。 サイズぴったりなその指輪が…私の背中を押すように光った。 「香奈、愛してる…。俺と結婚してくれ。」 その言葉に胸が詰まる。 無意識に涙がポロポロ零れ声が出なかった。 さっきまでの不安が嘘のように消えていく。 辛かった日々も、泣いた事も。 全てこの日の為だったような気さえした。 「香奈、返事を…」 斗真が立ち上がって私を引き寄せる。 髪にキスを落とし、私の手を包むように握った。 返事なんか…決まってるじゃない。 涙を流しながら、私は満面の笑みを斗真に向けた。 「こちらこそ…よろしくお願いします。」
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