回り始めた歯車、終焉の予兆

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あれから1ヶ月半もの月日が流れた。 あの一件以降、美摘と吉田の関係は随分と冷え切ったものになっていた。 幼なじみという関係は嘘のようになり、今、吉田と美摘は雇い主と小姓という主従関係にある。 交わす言葉は美摘が吉田に小姓として仕えている上での必要最低限度の機械的なものばかり。 桂はそんな二人を誰よりも歯がゆい気持ちで傍観していた。 あの日の河原にて桂は吉田から全てを聞いていたのだ――……。 『最近京を騒がしている不審火は全て私が手を引いているでしょう』 『……あぁ、そうだな』 桂は吉田が放火をしていたことも全て知っている。 命などいらないという狂気染みた吉田の覚悟の上での放火だったために桂も彼のやることを容認している部分があった。 『私は過激派の志士。犯した罪は数知れず』 『…………』 『いい死に方はできないな、ということくらいわかっていました。良くて斬首、悪ければさらに晒し首になるでしょうね』 空を仰ぎ、ぽつりと呟く吉田とは反対に桂は気の利いた言葉が見つからず、地面に視線を落とす。 『私は斬首でも晒し首でも構いませんよ?でも、あの子だけは……』 あの子だけはどんなことがあっても、と吉田は繋げた。 『私なんかと深く関わっていればあの子まで巻き込んでしまう……。それが私の唯一の脅威なんです』 『それであんなことを……』 『馬鹿ですよね。そんなことわかっていたのに私がずっとあの子を欲していたばかりに私達は近付きすぎた』 クシャリと前髪を握る吉田は今にも泣きそうな表情で笑った。 『花見で壬生狼の奴らの会話を聞いてやっとその現実に向き合えたんです』 だから、と吉田は絞り出すような声で桂に告げた。 『私個人の我が儘であの子の幸せを奪うことなどできません』 と。 それが吉田が美摘を遠ざけた全ての理由だった。
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