回り始めた歯車、終焉の予兆

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「吉田先生、お茶です」 「あぁ、そこに置いといてください」 美摘は今日もいつものように書類と睨めっこをする吉田の元にお茶を持って行った。 あの日のことは冗談だと笑う吉田を夢見て毎日、毎日、足繁く彼の部屋に通ったが今日も素っ気ない返事だけが返ってきた。 (もう……稔麿とは友達よりも遠い存在になってしまったんだね) 美摘は言い表せぬ寂しさに涙がこぼれ落ちそうになるのを堪える。 「失礼しました」 美摘は業務的な言葉だけを残して吉田に自分の心の内を悟られぬよう足早に部屋を後にした。 「美摘……」 吉田は彼女が出て行って閉まった襖をじっと見つめる。 「巻き込みたくないから離れると自分勝手に決めたのは私なのにどうしようもなく、胸が締め付けられるように痛むのは何故なんでしょうね……?」 ギリ、と胸の辺りを押さえた吉田もまた、美摘同様に苦しんでいた。
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