回り始めた歯車、終焉の予兆

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桂は廊下を歩いていると前方に吉田の部屋から出てきた美摘を見た。 「美摘」 「桂さん……」 美摘は桂に気付くとすぐに笑顔を作る。 悲しみを悟られないようにと作った笑顔が痛々しかった。 桂は美摘に全てを打ち明けようかと悩む。 あの日、吉田に言われたある一言が桂を思いとどまらせていたからである。 『桂さん、美摘にはこのこと言わないでください。言えば美摘に初めて嘘をついてまでして彼女を傷つけた意味がなくなってしまいますから』 吉田の想いを裏切ってまで事実を伝える踏ん切りがつかなかった。 だが、吉田と同じくらい桂は美摘のことを大切にしている。 家族同然に接してきた彼女に事実を隠し続けることは桂にはできなかった。 「美摘……。お前は稔麿とともに死ぬ覚悟はあるか?」 最終的には美摘の判断に任せようと桂はそう訊く。 その問いに対する美摘の答えは一つしか有り得なかった。 「彼と死ねるなら本望です」 「……ついて来なさい」 美摘の迷いなど微塵もない即答に桂は話す決心がついたのであろう。 美摘の手を引くと自室へと向かった。
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