回り始めた歯車、終焉の予兆

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桂は長州藩邸の庭の一角に植えられてあるすっかり葉が緑色となった桜の木の前で足を止めた。 「美摘は稔麿と最近前のように話さなくなったな」 「……えぇ。ある日突然吉田先生と呼びなさい、敬語を使いなさいと淡々と言い渡されてしまいましたから」 愛想尽かされたんですよね、と繋げて酷く悲しみに沈んだ表情で微笑む美摘。 「美摘は……本当にそう思っているのか……?」 振り返った桂の瞳が美摘の心を射る。 そうじゃなければ、と何度淡い希望を抱いたことか。 核心に触れられた美摘は無意識のうちに視線を外した。 桂は美摘の気持ちを汲んだ上であえて話を中断せず、続ける。 「美摘は最近京を騒がせている不審火については知っているよな?」 「……? えぇ、一応は」 いきなり話を変えた桂に美摘は疑問を抱きながらも頷く。 桂は妙に改まって落ち着いた口調で美摘に告げた。 「最近続く不審火は全て稔麿が裏で手を引いている」 「なっ……!」 美摘は即座に桂へと視線を戻した。
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