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その頃、桂から全てを聞いた美摘は吉田が部屋にいるとばかり思い込み、彼と少しでも話ができたらという小さな願いから彼の部屋へと来ていた。
だが、あいにく彼は部屋にいない。
それもそのはず。彼は今、桂と会話しているのだから。
しかし美摘はそのようなことを知るはずもない。
そっと彼の部屋に忍び込み、そして“ある物”を見つけた。否、見つけてしまった――……。
「何、これ……」
机の上に無造作に置かれていた一枚の紙に美摘は顔を真っ青にした。
これは空き家への放火などという生易しいものではない。
御所への放火、天皇奪回……
美摘はいけないと思いながらも紙を手に取り、全てを知ってしまった。
計画の打ち合わせが池田屋で行われることも――……。
「六月五日、池田屋」
美摘は言い知れぬ不安に駆られた。
そして集会の日時と場所を確認すると何事もなかったかのように紙を机へと戻し、足早に部屋を出て行った。
交錯する想い――
それぞれの覚悟――
回り始めた歯車は止まることを知らず、彼らを終焉への道へと誘(いざな)う――……。
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