乱反射の中に潜む涙

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あまりに唐突に咲から出た、いつもと違う言葉に俺は一瞬だけ頭に疑問符を飛ばし、動けなくなった。 というより、初めて聞いた君からの“死”という言葉に心底驚いていた。 「……何言って……」 いまだ言葉を理解できず、言葉というよりその意味が分からずに咲を凝視する自分の瞳。 だって君の表情は常と変わらず、笑顔だから。 聞き間違えとか、何かの冗談だと思うのが当たり前だろう? けど、再び咲の唇は残酷な言葉をいとも簡単に紡ぐ。 「……死ぬことは、怖くないよ」 いきなり何を言い出すんだ。
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