例えばそれが我が侭でも

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「あー確かに今年は、去年より……暑いかもしれないっ……」 学校帰り。誰より早く校門を抜けて駆けていく。 昨日と同じ、一昨日と同じ。 ずっと昔と変わらない君がいる場所へと、俺は今日も向かう。 今日は右手にプレゼントを握り締めて。勿論プールの話しも手土産に。 君は笑うかな。あの笑顔で―― 病院に駆け込んでそのまま通路を突き進む。 101…101…… 心の中で君のいる部屋の番号を繰り返し呟いた。 と、俺の足が不意に止まる。 「……おばさ、ん?おじさん……?」 101号室の目の前の少し薄暗いそこにいるのは、咲の母親と父親だった。
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