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途中の駅で一旦乗り換えをした後、ようやく遊園地近くの駅まで到着する。
改札を抜けると目の前には違う世界が広がっていた。
そこは、平凡な日常から非日常世界へと繋がっていて、いつになく、あたしのテンションは上がっていた。
「類、早く行こっ?」
「ちょっと、いきなり引っ張らないで!?」
腕を強く引っ張り過ぎたのか、類は痛そうに顔をしかめている。
あっ、つい力が入れすぎちゃった……
「ごめん、痛かったよね?」
強く掴んでいた手の力を緩めると、慌てて類の腕を擦る。
「いいよ、楽しみにしてたでしょ?混んでるとは言っても、遊園地は逃げていかないから、焦らずに行こうよ」
苦笑いを浮かべる類に、何だか申し訳ない気分になって、しょんぼりと俯く。
「折角の遊園地で、そんな顔しないで。僕は未琴の喜ぶ顔が見たいんだ。ほら笑って?」
ああ、やっぱ類の笑顔には勝てないや。
名前の呼び方も、『みこ』から『未琴』に変わって、何だか特別って感じがして嬉しいんだよね。
類が女の子を呼び捨てにするのは、あたし以外に聞いたことがないから。
あたしでさえ、途中までは『さん』付けで呼ばれてたし。
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