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「う~ん? 話を聞く限りだとお風呂とかあるらしいし、水浴びの覚悟はいらないよね。じゃあタオルくらい? あんまり複雑な柄じゃなくていいならそれも私が作れるし」
「この前みたいのはやめてくださいね」
「あれ? なんかしたっけ?」
「日溜散葉は僕の嫁って大文字で書いてあったタオルです。咲夜さんに捕まってさんざんだったんですから」
マラソン大会(校内を回る)の時になにも知らずに渡された僕は首にそのタオルをかけて走っていたのだからもう本当に恥ずかしかった。
「ふ~んだ。私、嘘ついてないもん。私は零也くんの妻だもん」
「や、そこを否定してるんじゃないですよ。そこについては学園中が知ってますし、僕だってそう思ってます。散葉は僕のお嫁さんです。ただですね、前回は命先輩が任務で居なかったからよかったですけど今回は来ないはずないですし、二人の相手してたら散葉さんに構ってあげられませんよ?」
「う…」
「ね? それに最近大人しい神狩りが攻めてこないとも限りませんし、力は温存すべきです。なにより明日も七海は命先輩の所に行くみたいですし…デートだって少し楽しみにしてたんですよ?」
久々に学校に行き始めたから毎日が割と忙しくてあまりゆっくり二人で出かけたりはできなかった。明日の買い物はある意味、降って湧いた幸運だ。
「零也くん…。でもせっかくのデートなのにこれじゃあ他人から見たら仲のいい姉妹──」
「次言ったらいい加減怒りますからね。そんなの散葉がいつも通りでも僕の身長からしたらそう見えてもおかしくないんですから」
ペンを置いて、僕は散葉さんを抱き上げてベランダへ歩き出した。七海より少し重いくらいだから僕でも余裕だ。
「ほら、まだ宵の口です。妻なんでしょう? お酒は飲めませんけど、満月ですし月見がしたいです。お酌してくれませんか?」
「………! うん、よろこん──」
「悪いんですけど、それは来月の十五夜にお願いします」
不意に散葉さんの声を遮るようにリビングから声が聞こえてきた。咲夜さんだ。
「咲夜、あんた今日を命日にしたいの?」
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