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「零也っ!」
ガラスの鈴のように凛々しい声が突然に教室に響いた。
ドアの前で綺麗な白髪を揺らしているのは僕の先輩、龍之沢命さんだ。何故だか肩で息をしているけどどうしたんだろう。
…いやな予感がする。
「命先輩…?」
「零也すまないっ、私のミスだ! 散葉が…」
思わず立ち上がる。
椅子が倒れてけたたましい音を立てた。みんながこっちを見ているけどそんなの知ったことじゃない。
「散葉さんがどうしたんですかっ!?」
「校長室に行けばわかるはずだ…」
「っ…!」
心臓がばくつく。
嫌だ、散葉さんが怪我でもしたとか?
それも命先輩が焦るほどの大怪我?
考えるより早く、僕の足は校長室へ向かっていた。
「散葉っ…!」
☆
「散葉さんっ!」
校長室に着くと同時に扉を押して叫ぶ。何があったんだろう。まさか神狩りに襲われたとか。だとしたら相当の大怪我を───。
と、思考を巡らせた一瞬後、僕の腹部に何かが衝突した。
「ごふっ!?」
苦痛に耐えながら恐る恐る下を見下ろすとちんまりした頭に緋色の髪が視界に入った。
「な、七海…髪の色散葉さんと合わせたんだ? 似合ってるよ」
「違うよー…? 今日は七色の日だよー…? それにそれ、七海じゃないよー…?」
校長室の椅子に座って咲夜さんの隣に座っていた僕の娘はそんなことをのたまった。
いや、ちょっと待て。
じゃあこれは、まさか───?
「零也くん…私…こんななっちゃった」
身長三割減(当社比)の散葉さんは涙を目に溜めながらそんなことを口にした。
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