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☆
時は一時間前に遡る。
十時を過ぎて、私は咲夜に頼まれていたものを持って校長室へ向かっていた。
「ふ…ふふ…。咲夜もたまにはいいことを考える」
そうひとりごちて私は校長室のドアを開いた。
そこで待っていたのは───。
「すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみません」
仁王立ちする散葉と頭を地面にこすりつけてひたすらに謝り続けている咲夜だった。
「零也くんは誰の恋人か口に出しなさい」
「ち、散葉さんです」
「あなたがしていたのはなに?」
「零也さんの下着に頬擦りしてましたすいませんでした」
「声がちいさぁぁあい! この部屋の物片っ端から深海に転移させられたいの!?」
「すいませんでしたぁぁああ!」
なんだ、この混沌とした空間は。散葉がなにやら異常な怒りを見せている。
「あ? なんの用よ命」
「い、いや、咲夜に頼まれていた物を持ってきたんだが…」
本気でどうしたんだろうか。散葉が怖い。
「咲夜、何を持ってこさせたの?」
「い、いえ散葉さんには関係な────」
「いいからさっさと吐きなさいっ!」
「龍族に伝わるお菓子にございますぅぅう!」
「………お菓子?」
怒り狂っていた散葉は少し落ち着いたのか言葉を繰り返す。確か前に零也から聞いた話しだと散葉は甘い物に目がない。とりあえず
・・・・・・・
害のないものを渡して大人しくさせて────。
「よこしなさい! あぁもういいわ! 勝手に取るから!」
油断した。鞄を渡さなければ安全と思っていたから失念していた。散葉には超絶技能の空間転移があった。
しかし気付いたところでもう遅い。よりによって最悪のクッキーを手にしていた散葉はそれを口に頬張って───。
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