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Ⅱ
「……屈辱……」
散葉は寝室のタンスの前で呟いた。手には零也を誘惑するための下着が握られている。
しかし、なにをどうしようと到底サイズが合わない。
なにせ体は子供。豊満すぎるもとの体の下着が合うはずがない。試しに胸に当ててみるも、なんの抵抗もなく落ちる。
「完璧に子供…か」
「散葉さん、どうし…うわっ!? すいません! まさか着替えてるなんて思ってなくて…」
すかさず背を向けた零也に散葉はため息をつく。
「…いいよ零也くん。少し七海より大きいくらいの体じゃなにも感じないでしょ」
「なに言ってるんですか! 大きさが変わったって散葉さんは散葉さんですっ!」
予想外の言葉に散葉は目を剥いた。
「だって…僕、散葉さんの声だけでドキドキしちゃうんですよ? 気にならないわけないじゃないですか」
それだけで散葉はノックアウト寸前だったが、伝わらないと思った零也はほぼ全裸の散葉に向き直った。
「ち、散葉さんが信じてくれるなら僕、なんでもします!」
「………なんでも?」
復唱する散葉にほんの少しだけたじろいで零也は断言する。
「なんでもです」
「じゃあ…キスしたり、いつもみたいにえっちなこともできる?」
「はい? え、えぇ。散葉さんがいいならやぶさかじゃないですが…」
思いのほかあっさり了承されてなんだか拍子抜けしてしまった。七海は旅行用に龍の国の衣装を命に作ってもらっているため、今はいない。
零也は赤い顔をしながらも近付いてきて、抱きしめた。
「でも、違いますからね。僕はその倒錯的幼女至上主義者…えっと、俗に言うロリコンさんなわけじゃなくて散葉さんがこの状態だからするんですからね?」
「もう、疑ったりしないよ。だからキス…して?」
「喜んで」
背伸びしなければならない位置に零也の顔がある。それがとても不思議だった。
「…ほら、この感触はいつもと同じです」
「…そうだね」
顔を見合わせて笑うと零也は散葉の頬に右手を添えた。
ぞくりとした刺激が背を伝う。
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