3419人が本棚に入れています
本棚に追加
☆
打ちつけるシャワーがうざい。けれど止めるのも面倒くさい。零也くんの前ではなんとか頑張っていたけれど、やっぱりショックだ。
「あ、あの散葉さん」
「ひゃい!」
唐突にかけられた声に私は思わず飛び上がった。
「な、なに? どうかしたのかな?」
「一緒に入っても…いいですか?」
「…………え?」
「い、一緒にお風呂…です」
「もちろんいいよ! いい…けど…」
「じゃあ、入っちゃいますよ」
私の言葉を聞かずに零也くんは浴室に入ってきた。
左手でタオルを持って前を隠している。今更隠さなくてもいいのに。
「もう体とか洗っちゃいましたか?」
「まだ浴びてただけだけど…」
「じゃあ洗ってあげますよ」
「れ、零也くんどうしたの? 解魂水でも飲んだかな?」
「正気ですよ。ほら、後ろむいてください」
肩をつかまれて後ろを向かされる。嬉しくはあるけど、零也くんが考えていることがわかってしまった。
「……私ってそんなにわかりやすいかな」
「なんのことですか?」
「心配かけちゃったんでしょ。いつもはあんなこと言わないもんね」
背中越しの言葉は図星だったらしく零也くんは黙り込む。
だめだな、私は。神様のくせに心配かけるなんて。
またもや沈みかける私を、零也くんは後ろから抱きしめてきた。
「いいじゃないですか、どんどんかけちゃってください。普段頼られない分、こういうときくらいは助けになりたいんです。散葉さんは嫌ですか? 僕に助けられるのなんて」
「そんなことなんてない! うれしいに決まってるよ!」
「だったらなおさらです。散葉さんはどんな姿をしていても魅力的な散葉さんです。僕が一番愛している人です。だから自信をもってください」
「……うん、ありがとう。零也くん…大好き」
この人を好きになれてよかった。もう何回目になるかわからないけれど、私は確かにそう思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!