1.異界への旅路

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       ☆  打ちつけるシャワーがうざい。けれど止めるのも面倒くさい。零也くんの前ではなんとか頑張っていたけれど、やっぱりショックだ。 「あ、あの散葉さん」 「ひゃい!」  唐突にかけられた声に私は思わず飛び上がった。 「な、なに? どうかしたのかな?」 「一緒に入っても…いいですか?」 「…………え?」 「い、一緒にお風呂…です」 「もちろんいいよ! いい…けど…」 「じゃあ、入っちゃいますよ」  私の言葉を聞かずに零也くんは浴室に入ってきた。  左手でタオルを持って前を隠している。今更隠さなくてもいいのに。 「もう体とか洗っちゃいましたか?」 「まだ浴びてただけだけど…」 「じゃあ洗ってあげますよ」 「れ、零也くんどうしたの? 解魂水でも飲んだかな?」 「正気ですよ。ほら、後ろむいてください」  肩をつかまれて後ろを向かされる。嬉しくはあるけど、零也くんが考えていることがわかってしまった。 「……私ってそんなにわかりやすいかな」 「なんのことですか?」 「心配かけちゃったんでしょ。いつもはあんなこと言わないもんね」  背中越しの言葉は図星だったらしく零也くんは黙り込む。  だめだな、私は。神様のくせに心配かけるなんて。  またもや沈みかける私を、零也くんは後ろから抱きしめてきた。 「いいじゃないですか、どんどんかけちゃってください。普段頼られない分、こういうときくらいは助けになりたいんです。散葉さんは嫌ですか? 僕に助けられるのなんて」 「そんなことなんてない! うれしいに決まってるよ!」 「だったらなおさらです。散葉さんはどんな姿をしていても魅力的な散葉さんです。僕が一番愛している人です。だから自信をもってください」 「……うん、ありがとう。零也くん…大好き」  この人を好きになれてよかった。もう何回目になるかわからないけれど、私は確かにそう思っていた。
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