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骸の言葉に流石の自分もカチンと来て頬を膨らませ相手をじっと恨めしそうに睨む。
溜め息の原因は、明日の音楽で行われる歌のテスト。
歌も得意ではないし、更に皆の前で歌うなんて緊張して気絶でもしてしまいそうだ。
そのことを思い出すたびに繰り返す、溜め息。
(俺だって好きで吐いてるんじゃないよ…でも、憂鬱なのには変わりないんだよっ)
「綱吉くんの声はとても綺麗ですよ?」
掬い取られていた顎は介抱され、またさっきと同じペースで歩いていた最中。
突然骸が突拍子も無いことを言う。
(一体何を根拠に!)
「はあ?」
「クフフ…特にヤっている時の綱吉くんの声に適う者なんてそうそういないでしょう。ああ、思い出しただけで興奮してきました…!」
「っぎゃああああ、余計なこと思い出すなあああ!!!」
顔を真っ赤にして叫び散らし、いらないことばかりを口走る骸の口を手で覆おうとしたら。
するりと手首を掴まれ、一気に身体を引き寄せられバランスを崩した俺は骸の腕の中にすっぽりと納まってしまい。
「余計なことだなんてそんなそんな。扇情的でとても素敵ですよ?」
「黙れ、頼むから黙れ!」
「お願いなのか命令なのかわからないんですが」
「お願い!!」
必死になる俺を無視して骸は人目も気にせず俺の身体に回した腕に力を込め、更に身体を密着させて。
綱吉がブチ切れ死ぬ気丸に手を伸ばすまで、あとすこし。
-091025-
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