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弥生は黙って慎の横に座った。
「慎君はどうしてこんなに遠くまで来たの?」
「…旅をしてるんだ。」
「旅?」
「そぅ。
俺の親、俺が中学の三年の時死んじゃってさ、その親の遺産で旅をしてる。」
「家はないの?」
「ない。
家具とか全部売って金にしたから。」
「……………………。
慎君、お願いがある…」
「ん?」
「私も一緒に旅をしたい。」
「…それは駄目だ。」
「なんで…!!」
「弥生ちゃんには学校があるし第一家族が「家族はいないよ。」
「え?」
弥生は俯きながら慎の言葉を遮った。
「私の家族も去年事故で死んだんだ…」
「…………………。」
「だから私が学校を休もうが誰も何も言わない。
だからお願い…一緒に連れてってよ…。」
弥生は泣きそうになるのをこらえて慎に頼んだ。
しかし、慎が返した返事は…
「返事は"NO"だ。」
弥生は一気に顔を上げた。
「どうして…」
「あんたにはまっすぐ前を向いて生きてほしい。
俺は家に一人でいることが出来ないから逃げて来たんだ。
だけど、俺はこうやって旅を始めて後悔がないわけじゃない。」
「後…悔…?」
「そう、"後悔"。」
弥生はずっと海を見ている慎の横顔を見つめた。
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