始まり始まり

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「富潟君……優しいから」 「え!?」 もしかして、さっきの場面で手を貸したからだろうか。 「あれだけで相部屋を?」 「……あう、違う」 「え?」 「クラスでも……富潟君。いつもみんなに優しい。誰にだって、おんなじように優しい」 そして……と、ねくらんは続けた。 「私にも……優しくしてくれた」 目元は見えない。口だけが笑みをつくったのが見えて、 「……うれしかった」 今にも消えてしまいそうな儚げな声からは、ねくらんの精一杯の感情が盛り込まれていた。 「だから、富潟君となら、私…やれる……って」 そう思ったの。最後の締めくくりに、ねくらんはそう言った。 「………………」 ……困った。本当に困った。 ここまで言われたら、俺から断れることなんて出来ないだろ。 頭の中で、管理人さんがケラケラ笑う姿が浮かんだ。
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