始まり始まり

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第三高等部寮。ここは寮の中で最も建築年数が少ない、つまり綺麗な建物だ。 部屋も二人部屋にしては広く、405号室もその例に漏れていなかった。むしろ角部屋なので少し広いぐらいだ。管理人さんのせめてもの償いだろうか。 それはいいとして、だ。 「………………」 「………………」 「………えーと」 「はぅ……」 「………………」 「………………」 この空気……どうにかしてください。 部屋に入り、そこに置かれている自分たちの荷物を見ると、改めて共同生活という言葉が意識されてきた。 ねくらんの荷物は少ない。俺と同じぐらいだ。女の子ならもう少しあってもいいと思うけど。 女の子……か。 そう言えば、あの場ではうやむやになってしまったけど、あの時はっきりと見えたよな。 いや、パンツじゃなくて顔がだよ? ちらりと隣を窺う。ドアから一歩も中に入れないまま、あうあう言っているねくらんの姿がある。 あの前髪の下には、すごい美少女がいたのだ。 そんな人に面と向かって共同生活のお願いとかされちゃったんだよなー。 ……いかん。危うく、くすぐったくて床を転げ回るところだった。
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