始まり始まり

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なるべく衝撃を起こさないようにゆっくり歩く。すると、 「あぅ……」 きゅっと、ねくらんが再び服を掴んで俺に寄りかかってきた。 ねくらんの顔も、こてんと俺に寄せてくる。 「………………」 俺は完全に動きを止めた。 動けないよ。動けるはずがないよ。純情ピュアボーイなんだよ俺は。 「んん……っ」 ねくらんが心なしか満足げな寝息をたてた。 そして次の瞬間である。 「し……ん…じ……」 俺に雷が落ちたのかと思った。 体がぞわぞわっと、言いようのない何かに打ち震えた。 石化の魔法ってレベルじゃない。ブロンズ像に金縛りでもかけたかのように、指先1ミリも動かせそうに無かった。 それから何があったのかは覚えていない。次に気付くとソファーに座っていた。 寝室を見るとねくらんが眠っていたので、無意識の俺は立派に任務を遂行したようだ。 「俺は……これからやっていけるのか……?」 外は、少しずつ夕闇が迫ってきていた。
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