普通の少年と根暗少女

6/9
前へ
/472ページ
次へ
そう思いつつ、俺はあることに気づいた。 ……そういや、ねくらんの顔ってはっきり見たことないな。 いつも前髪で隠れているし、気配を感じさせないのでそもそも見る機会があんまり無い。 ……案外前髪の下は美少女だったりして。 …なーんて、そんなムシのいい話はないか。 でも意外とたまに聞く声はか弱いけど可愛い声だし、背はちんまくて華奢だし、ステータスは常に状態異常だが物腰は柔らかい。話してみると案外いい奴なのかもしれないな。 つらつらとそんな思考する俺の隣を、他の高等部生徒が追いかけっこしながら抜き去っていく。 どんっ 「きゃっ」 「あっ!」 後ろを向きながら逃げていた男子の肩がねくらんに当たり、ねくらんが倒れてしまった。 男子生徒どもは気にも留めていない様子で、周囲の雑踏に紛れる。 周囲の生徒も、まるでねくらんが透明人間であるかのように無視している。 もしかして気配キャンセラーがこういう時も働いているのだろうか。 そんなアホな考えをすぐに打ち消し、俺はねくらんの元に駆け寄った。
/472ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30476人が本棚に入れています
本棚に追加