普通の少年と根暗少女

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歩き出して数十歩ほどで、何者かが俺のブレザーの裾を握った。 「ん? ……おおっ!?」 振り返ると意外や意外。ねくらんだ。まさかねくらんから行動を起こされる日が来ようとは夢にも思っていなかったので、結構ビックリした。 「どうした?」 「……あう………はう……」 ねくらんはしばし口をパクパクさせていたが、意を決したように――― その時、季節はずれの春風が吹いた。 「あ…ありがとう!!」 そう言ったねくらんの前髪と、 「………………」←俺 スカートが、 「………………」←ねくらん 見事吹き上げられた。 初めて聞いた大声、そして純白。 何より、前髪を上げた彼女の顔。 「ふえぇ……」 目を見張るような美少女が、困ったように声を出した。 それが、ねくらん……天崎菫(あまざきすみれ)との物語の始まりだった。
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