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さっきも下敷きで僕の下っ腹が
ポインポインされていた様に、
まさるやだいきは僕の
お腹をよく触る、
というか、もてあそぶ。
その度に文句を言うのだが、
「恥ずかしいならそんな
腹してんなよ。ふひひひひ」
というのが、
まさるの意見である。
だいきは、
「触って何が悪い!」
との事。
正直、何が悪いか
って言ったら、気色悪い。
「お前さあ、そのうち顎が
なくなるんじゃねえのお?」
現在は、三人一緒に
机を囲んで昼食中。
僕が幅をとるので
三者面談をしている感じに
なってしまっている。
「だいきも、オトナになったら
きっと贅肉たっぷりになるよ。
……そう、僕は
予行演習をしてるんだ。
本当の中年になった時のね」
「屁理屈ばっかのお、
大人にはなりたくねえなあ」
屁理屈は風で飛ぶしね。
そりゃあ屁理屈ばっかじゃ
いけないよ。
……理屈は感情で飛ぶけど。
「いやいや、屁理屈も重要だ。
だって屁が出ないと腹が
痛くなるし」
「じゃあ何か?
屁理屈を言えば
心が和らぐとでも?」
「どうだかね」
知らんがなと
言いたげなまさる。
「でもよ、屁理屈云々。
その腹はどうにかした方が
良いよなお前は。
若いのに中年って
終わってるだろ」
「終わりの――始まり」
若干、キザっぽく、それでいて
渋いナレーションの如く
言ってみた。
「それが格好良いと
思っていいのは、
せいぜい中二くらいまでだ」
そうかもしれんね。
「そういやよお?
よくメタボな腹には
夢がつまってるって
言うけどさあ?
絶望しか詰まってないのに、
何が夢なんだろうなあ?」
絶望の先には夢があるんだよ。
儚い夢しかないんだよ。
ぶっちゃけ、ありもしない
希望しか無いんだよ。それを
夢とみたててるんだよきっと。
そんな事をまさるは呟いた。
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