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手を伸ばしたのは何かに触れたかったからだろうか?
それとも、誰かに触れてほしかった?
自分でもわからない。ただ、他に何も思えなかった。ユキは笑って僕の頬を撫でた。
「可愛い人」
そう言って、点滴の針を僕に突き刺した。
「苦しまずに死ねる毒よ」
僕を、慈しむように微笑んで言った。
つまり、僕の願いを叶える事を受け入れたと言うことだ。
「それにしても心配だわ」
僕は彼女の瞳を覗き込む。彼女はそれに気づいて、笑った。微笑みでない、笑み。
「貴方を失った世界で生きていける気がしないの」
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