◇第四章◇

8/20
前へ
/389ページ
次へ
「あ、ユウ兄、おはよう!」 「おはよう…って遥斗、学校ではお前にとって僕は教師だといつも言っているだろうが」  つい反射的に返事をしてしまった優一は慌てて訂正するが、その様子を遥斗は楽しんでいるようだった。 「ったく…」 「おはようございます、優一先生」 「はい、おはようございます。蒼井くん、未緒さん」 「お、はようございます、優一兄…先生」 「ハハ、まだ言いにくそうですね。まあ、少しずつ慣れていけばいいですよ」 「はあ…」 「何だよ、ユウ兄。俺の時とは随分違うじゃん」 「お前は何年、一緒だと思ってるんだ。それを思えば当たり前だ」 「アハハ、言えてる!」  何気ない会話で盛り上がる遥斗達。 その後、各自の教室に戻った未緒達はこの日一日の学校生活をスタートさせた。 「――この時、この式にXを代入し…ー」  午前中の授業を無事に受け、昼休みを挟んだ後の午後の最初の授業。 未緒は呆然と数学の授業を聞いていた。  お腹が満たされているせいもあるのか、教室の窓から入り込む心地良い風がクラスの大半に眠気を注ぎ、両手を広げて夢の中へと招待する。
/389ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1857人が本棚に入れています
本棚に追加