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クラスの中にもそんな甘い誘いに負けそうになる者もいれば、必死に眠たい頭を無理矢理動かしながら理解しがたい説明を繰り返す数学教師、羽鳥の授業に耳を傾けている者もいる。
そんな中、以前実の父、理一から一通りの学問を教わっていた未緒は、ちまちま欠伸を漏らしながら青く澄み渡った空を眺めていた。
窓の外では時折見かける鳥達が悠々と青いキャンバスの上を泳いで自由を誇っていた。
そんな彼らを目で追っているとふいに大きな欠伸が漏れる。
すると、タイミングが悪かったのか散々黒板の方を向いていた羽鳥に名前を呼ばれた。
「東宮寺、私の授業はお前にとってそんなに欠伸が出るほど退屈か?」
羽鳥は片眉を上げ、不機嫌というよりも何かを企んでいるような表情を浮かべながら見ていた。
「いえ、別にそういう意味では…ー」
「そんなに退屈なら、前に出てこの問題を解いてみろ」
欠伸が出来るほど余裕なら出来るだろ、と羽鳥は嫌みをこぼしながら、何も書かれていなかった部分にずらずらと問題を書き始めた。
こうなってしまっては何を言っても無駄だと思った未緒は仕方なく書かれていく問題一つ一つに目を通していく。
するとそれは決して高校生では解けないようなものばかりが並び、明らか嫌がらせのために用意されたものとしか思えなかった。
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