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その日の放課後、クラスメートと別れを告げた後、帰り支度をしていた未緒のもとに遥斗と拓人が声をかけてきた。
「未緒、今日も真っ直ぐ帰んのか? 」
「うん、そのつもりだけど」
未緒は鞄に荷物を入れる作業を止め、遥斗達の方を向く。
「んじゃ俺らの買い物付き合わねえか?」
「買い物?」
「うん、遥斗が新しいサッカーシューズが出たから見に行きたいんだってさ」
遥斗の隣で手に持っていたサッカーカタログを未緒に見せながら拓人が説明する。
「そろそろ試合も近いし、ちょうどいいのがあればそれでやりてえからさ! な、お前も来るだろ?」
「ふうん、まあ別にいいけど?」
「マジ!? おしっ、んじゃそうと決まればとっとと行くぞ!」
「あ、ちょっと…!」
まるで先を急ぐかのように早足で教室を出て行く遥斗を追いかけようとすると、ふと拓人がそっと未緒にだけ聞こえるように耳打ちをしてきた。
「遥斗、あんなこと言ってるけど、ほんとはね未緒ちゃんに街を案内してあげようと思って誘ったんだよ」
「え…」
遥斗には言ったこと内緒ね、と自分の口元に人差し指を当てる拓人は悪戯っぽく笑ってみせる。
「おい、拓人、未緒! 何してんだよ、早く行こうぜ!」
「うん、今行く! 行こ、未緒ちゃん!」
「あ、う、うん」
思わぬ言葉にぼーっとしていた未緒は拓人の促しに一歩遅れながらも先行く遥斗の後を追いかけた。
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