1857人が本棚に入れています
本棚に追加
「…んでよ、そん時のあいつときたらさ…ー」
学校を後にし、街に向かった未緒達は遥斗の話を聞きながら目的地の店を目指した。
帰宅路から少しズレた街並みを平然と歩いていく遥斗達に対し、隣を歩いていた未緒は初めて歩く場所と場景に目を見張っていた。
ちょっとでも気を抜いたら迷子になってしまいそうになる人数だけではまだ足りず、それに比例するほどの様々な店舗を構えた大通りは大いに賑わっていた。
「お~い、未緒。こっちだぞ!」
「あ…うん」
慣れない状況に辺りをキョロキョロしていた未緒は知らないうちに遥斗達とはぐれていたのか、危うく間違った道に進もうとしていたところを遥斗に止められた。
「ったく、しっかりついて来いよ」
「ご、ごめん」
「まあ、迷子にならなかっただけマシか。…ほら、ここだよ」
遥斗は文句をこぼしつつ、前方にある建物を指差した。
見るとそこには奥行きも十分過ぎるほどある三階建ての大きな建物があり、各フロアーのウインドーにはその階で販売されていると思われるスポーツ用品の見本がマネキンと共に飾られていた。
未緒は思わずその規模の大きさに建物を見上げた。
「随分、大きな店だね」
「うん。このスポーツショップ、最近できたばかりで、品揃えも数も豊富だって評判良いんだよ」
「そうなんだ」
「おう! それにこの店のおっちゃん、すっげえ気前良いんだよ!」
拓人と遥斗は以前にもここに来たことがあるらしく、店の様子を教えてくれた。
「じゃあ、俺らはシューズ見に行くけど、未緒も来るだろ?」
店の前に立ち自動ドアを開ける遥斗は、未だに後ろで店を見上げていた未緒に声をかける。
「え…」
未緒は首を下げ、そっと店の窓から店内を覗く。
中には最近出来たばかりで品揃えがいいことからか、見るからに人で埋まっていた。
その光景に未緒は思わず後退する。
「いや…人が多いから、外で待ってる」
「あ? …ああ、そっか、お前まだ人混み苦手だったんだっけ」
未緒の視線の先にあるものを見た遥斗は納得したように呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!