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「まあまあ、そう睨むな、颯次。それで、颯次の隣にいるのが三男の遥斗(はると)」
「……」
遥斗と呼ばれる男性は、歳は未緒と差ほど変わらないだろうが茶色の髪にそれと同じような色を持つ瞳は未緒を見ることなく、そっぽを向いていた。
「…はる、と?」
遥斗という名前に何か引っかかりの感覚を覚えた未緒は思わず遥斗の顔をじっと見つめる。
するとその視線に気付いたのか遥斗は鋭い目つきで睨み付けてきた。
「人の顔をジロジロ見てんじゃねえよ、このボケ」
「え、あっ…」
「こら、遥斗! 女の子に向かってなんてこと言うんだ!」
遥斗の態度に隣にいた颯次の顔に怒りが混じるが、それにもお構いなしに遥斗の態度は改まることなく、代わりに今度は颯次に暴言が向けられた。
「うっせえな、俺が何て言おうが勝手だろ」
「何だとっ! もう一度言ってみろ!」
「なんだ、やるか?」
「止めないか! お前たちッ」
今にも喧嘩が始まりそうになる颯次と遥斗の間に優一が割って中に入る。
その様子を東宮寺氏は苦笑いを浮かべながらその光景を見ていた。
「いやあ、見苦しいところを見せてしまったね。どうも遥斗と颯次は性格上、気が合わないらしくてね…まあ毎度のことだからいずれ慣れると思う」
「父さん、慣れるなんて言ってないで父さんも止めて下さいよ」
二人の暴走がようやく治まったところで、間に入った優一が溜め息をこぼす。
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