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「俺はお前を、俺達の家族になんか、認めねえからな!」
「遥斗ッ!!」
言うだけ言って応接室を出て行く遥斗を慌てて呼び止める颯次だったが、その声は空しくも乱暴に閉められた扉で遮られる。
その後、何とも言えない気まずさが流れた皆の間に申し訳なさそうな表情を浮かべて優一が頭を下げた。
「すみません、家族になった初日から嫌な思いをさせてしまって…」
「いや、別に…」
未緒の心情を気遣うようにして謝る優一に対し、未緒の表情は相変わらず無表情のままだった。
寧ろ、自分を受け入れてもらえないことになれてしまっているかのような顔をしていた。
「あの子は…遥斗は、本当は優しい子なんですが、性格が素直じゃないというか、少し皮肉れていて…」
優一は遥斗の出て行った方を見つめながら呟き、それをフォローするかのように言葉を続ける。
「ですが、あんな風に言っていてもきっと遥斗自身もあなたが来ることを楽しみにしていたに違いはありません。それは僕達も同じですから」
優一が颯次と瞬の方を見ると、三人は優しげな笑みを未緒に向けた。
「ようこそ、東宮寺家へ!」
遥斗を除き、優しく未緒を迎え入れてくれる東宮寺家の人々。
そしてその境遇に迷いを見せる未緒。
つい先程まで赤の他人に等しかった自分を快く家族の輪の中に招き入れる人々の温かさに、未緒は自分の知らない感覚に戸惑いを抱きざるを得なかった。
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