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「ったく、なんであんな奴を家族になんか受け入れなきゃならないっ!?」
家族紹介後、一人先に応接室を出た遥斗は、庭先で犬のコジロウと一緒にいた。
コジロウは何度も遥斗に遊んでほしそうな目をしてすり寄り、遥斗もそれに応じて、コジロウ用の玩具のボールを投げて遊び相手をする。
だが、遥斗の心はどこか違うところにあり遊びに集中してはいなかった。
「それに何だよ、あいつ。俺の顔をじっと見つめやがって、言いたいことがあるならハッキリ言えっつうのッ!」
遥斗は思い出すにつれた溢れ出てくる苛立ちにに任せて、持っていたボールを勢いよく投げてしまう。
ボールはコジロウの頭を通り越し、それを追ってコジロウも遥斗から離れていく。
「やべ、いけねっ…。おい、待てよ! コジロウ!」
遥斗は慌てて自分から遠ざかるコジロウの後を追いかけた。
遥斗達から離れていったボールは思いのほか遠くまで飛ばされたらしく、コジロウに捕まるまで庭の中央に設置された噴水近くに転がっていた。
一足遅れて追いついた遥斗をコジロウは尻尾を振りつつボールをくわえて待っていた。
「はぁ…はぁ…ったく、相変わらずお前は走るのが早いな!」
軽く息を切らしながら、遥斗はコジロウからボールを受け取り、頭を撫でてやる。
すると中央の噴水の方から、何やら慌ただしい鳥の鳴き声が聞こえてきた。
遥斗はそっと物の陰からコジロウと噴水の方を見やると、そこでは鴉と雀が喧嘩をしているように鳴き合っていた。
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