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大きさでも負けてしまう雀一羽に対し、鴉の方は二羽と圧倒的に不利な立場にいた。
だが、雀はその場から逃げようとはせず二羽の鴉に必死に立ち向かっていた。
そんな雀を面白がるかのように鴉も容赦なく嘴や足を使って雀をいじめている。
「ありゃ、勝ち目ねえだろ。…コジロウ、行くぞ!」
その様子を見るに見かねた遥斗は雀を助けようと噴水の方へと足を向ける。
が、その瞬間どこから現れたのか三羽の鳥達の間に未緒の姿が目に入り、遥斗の足は無意識にブレーキが掛かった。
鳥達の間に立った未緒は双方の顔を交互に見ながら、何か喋っていた。
残念ながらその声は遥斗達のいる場所まで聞こえることはなく、喋っている様子が窺えるだけだった。
「…何やってんだ、あいつ」
普通ならしないような行動を取る未緒に、遥斗は首を傾げつつその様子を見つめる。
暫くすると、決着が付いたのか鴉の方が未緒たちから離れていくのが見えた。
それを確認すると雀の方は先程とは違う穏やかな鳴き声で歌い始め、未緒の指に止まって羽を休めた。
「雀って、あんな人懐っこい鳥だったっけ…?」
未緒の指に止まる雀を離れたところから見ていると、突然隣で大人しく座っていたコジロウが未緒の方へと走り出した。
「お、おい! コジロウ! 待てって!」
駆け出すコジロウを慌てて追いかける遥斗は、すぐさま無事に捕まえられるとホッと一息つき、ふいに顔を上げる。
その時、目の前に明らかこちらを向いた未緒が立っていたのにようやく気が付いた。
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