◇第三章◇

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「ええ、蒼井くんはとても良い子ですよ? 未緒さんにとっても良いお友達になると思います」 「とも、だち…」  未緒はその言葉の意味を考えるように繰り返し口にすると、そのまま何も言わずに再び窓の外に視線を送った。  帰宅後、夕食を終えた未緒は早めに疲れを癒そうと自室の奥にあるバスルームへと向かう。 が、シャワーのレバーを捻ったところでお湯の出がおかしいことに気がついた。  未緒は一旦バスルームを出て、執事室にいる要に声をかけると要はすぐに原因を調べ始めた。 だが、結局直すことが出来ず、明日修理に出すということで今夜は他の兄弟達が使うバスルームを使うことになった。 「はあ…」  ようやく風呂に入る事が出来た未緒は湯船に浸かった途端、無意識にため息が零れた。 暫く浴槽に溜まったお湯に身を預け、体の筋肉がほぐされていく感覚を感じていると、ふと帰りの車の中で優一に言われた言葉を思い出した。 「良い、友達か…」  未緒は遠く離れた天井を見ながら呟く。 「…友達なんて、いた例(ためし)がないな…」  そっと浴槽の縁に頭を預け、目を閉じ友達という意味を考えていると、ふと瞼の裏に放課後教室で話していた拓人のことが思い浮かんだ。 人受けが良さそうで、色んな表情で笑う拓人。 その性格はまるで未緒とは正反対のものと言っても過言ではない。 「拓人みたいな人が良い友達っていうのかな…」  未緒は閉じていた瞼を静かに開き、以前父、理一に学校についての話を聞いた時、ついでに言われたことを思い出した。
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