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一人部屋に残った未緒は与えられた時間を使って、自分に用意されたという部屋を呆然と見渡した。
見たことはあっても、決して自分が使うことのなかった家具の数々に、未緒はたどたどしい手つきでそれらを順に触れていく。
見た目以上の柔らかさを持っていたベッドに腰を下ろしてみたり、綺麗に整頓された棚の中の本を手に取り、ペラペラとページを捲ってみたりと、顔こそ無表情のままを保つが、どこか戸惑いや落ち着きの無さが行動に出てしまい、上手く隠せない。
ふと、ベッドの向かい側にある大きめのクローゼットに目がいく。
この中には未緒専用として用意された服が何着か入っていた。
「着替え…した方がいいんだよね…」
未緒は自分の服装に目をやり、クローゼットの中から無難そうな服を適当に手に取り袖を通してみる。
どれも着たことのないような服ばかりで、良い布を使っているのか、それらは触り心地も着心地も良かった。
そんな中から未緒が選んだ一着は、白いブラウスにベージュ色のジャケット、そして黒い膝上のハーフパンツという出来るだけ動きやすそうなものを手にする。
シンプルな服装な上、腰の辺りまで伸びている未緒の髪は鏡に映る己自身の姿を妙に大人びさせているように見えた。
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