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「…産まれてまだ、間もないようでございますね」
「ああ、だから早めに巣に戻してやろうって思ってさ」
そう言って再び空いている片手を木に手をかけようとする未緒。
すると要も慌てるようにして未緒の行動を制す。
「み、未緒様! そんなこと未緒様自らがやる必要はありません。私がやりますので、未緒様はどうかここでお待ち下さい」
「でも…」
「未緒様、私がやりますので」
「……」
頑として譲ろうとしない要の勢いに、未緒は渋々、要の申し出を受け入れ雛鳥を受け渡す。
要は慎重に未緒から雛を預かると、にこっと微笑み、そのまま巣のある枝に向かって登り始めた。
スルスルと登っていく要の姿を心配そうなに見つめる小鳥達は安堵を求めるかのように未緒の肩などに止まっては服を引っ張った。
「大丈夫、彼ならやってくれるよ」
そんな小鳥達を宥めるように未緒は肩に止まった小鳥の頭を撫でながら巣がある付近まで登っていった要を目で追う。
巣のある枝まで登りきった要は再び落ちてこないように巣の位置を微調整すると、ゆっくりと巣の中に雛鳥を戻してやる。
そして再び雛が巣の中で鳴くと、未緒の周りに止まっていた小鳥達は一斉に喜びの声を上げ、巣に向かって飛び立つ。
その中を再び登りと同じようにスルスルと下りてくる要。
「これでもう大丈夫でしょう」
木から下りてきた要は衣服についた木の皮などを払いながら嬉しそうに巣を見上げる。
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